【今日のアトリエ】秋とともに深まるBESPOKEへの情熱【職人】
2020年10月4日
「新型コロナウィルス感染拡大防止の為に」
ご来店を基本的に予約制にいたしております。
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2020AW GIFT TICKET FAIR スタートします!
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9月25日・金曜日~10月26日・月曜日

店頭にはこの春の幾多の苦難を乗り越えた、イタリアのドラッパーズ(DRAPERS)から最新生地バンチブック(見本帳)が届きました!

ラグジュアリーフランネルの頂点「LADY SANFELICE AND FLANNELS」、
こだわりの社長コレクション「DRAPERS GOLDEN SELECTIONS」、
今回初登場 Super160`s コレクション「Greenhills」が登場。

しかし、驚いたのは何と言っても、かのSeptemberに現れた、「Earth, Wind and Fire」と名付けられた、全天候ウール生地が登場した事です。
生地背面に撥水、防水皮膜を貼り、なおかつ迷彩柄や各種カラー系のプリントを施した「アース、ウィンド&ファイアー」です。

レインコートやブルゾン、トレンチなど 、撥水加工を施したこのドラッパーズのEarth, Wind and Fireで、面白い作品が作れそうです。

衣替えの季節、10月になるとともに、本格的な秋冬物の仕立て作業で忙しくなってきた当店のアトリエ。

大柄なお客様のスリーピースの補正を考えるカッター伊達。
秋冬物はスリーピースのオーダーも多く入るとともに、ロングコートやBARBOUR風のブルゾン、自身がデザインしたラウンジジャケット、レディースのダブルブレストのジャケットなどなど、とにかく頭を使う作業が続きます。

最近納品したスリーピーススーツの補正では、ある大柄なお客様からの「シュッとしたスーツ」を作ってよ、というリクエストがきました。
いつもタップリとした余裕のあるお洋服が好きなお客様ですが、全体のシルエットをスマートにさせつつも、「着やすさ」という要素は外せないので、その両立をポイントにデザインと補正を考えました。
昨日納品させていただき「思った通りのスリーピース!」とご満足いただきました。

入社半年の新人小濱にラペルの作り方を教える加治木。
小濱は高校のファッション科で服作りを専攻して、4月の卒業後直ぐに当店に就職しました。アトリエではマスターテーラー加治木に付き、部分縫いから学び「引っ張り仕事」という先輩職人のパーツを作る作業をしてきましたが、ついにジャケットの製作に取り掛かりました。

各パーツを作るだけの作業と違い、一枚の毛芯の上に生地を据え、全体の出来上がりを考えながら最終的にジャケットを作り上げる。小濱的には想像を超える大変な仕事のボリュームらしく、毎週の朝礼での報告に苦戦が伺えます。
山登りと同じく、一歩一歩途方もなくつらいのですが、合間に景色が見えたりしつつ、山頂が近づいて来ます。先輩加治木の導きで成長してほしい「金の卵」です。

ジャケットの芯据えに集中する水迫
最近は水迫の緻密なハンドワークの成果が、服作りに結び付いてきました。
特にハンドステッチは、水迫自身が様々な番手の糸を使い、入れ方や引き方も変えて実験して、最適なビジュアルを生み出せるように技術を高めています。

キャメルヘアのネイヴィーブレザーに水迫が施したハンドステッチです。
カジュアルでスポーティーになりすぎず、ブレザーの印象がより良くクラシックになるように。
お客様やデザイン担当の福留理恵子と打ち合わせを重ねて、いい雰囲気に入れることができました。

トラウザーズ(ズボン)の専門職人、橋元
アトリエのメンバーに加わり2年半の橋元はトラウザーズ仕立ての専門職人です。

最近のトラウザーズは、ノーマルなタイプに加えベルトループレス、サイドアジャスタ付きのタイプが増えてきました。

今回オーダー頂いた、カノニコの6PLYという弾力性のあるメッシュ生地を使ってフライフロント、サイドアジャスタのトラウザーは、生地の落ち感も良く、とてもいい感じに仕上がっていました。
BESPOKEならではのトラウザーズの完成度をますます高めてほしいものです。

ベテランの薄窪は、若手が様々な技術面での壁にぶち当たった際に、解決法を導き出してくれるこの道54年の大ベテランです。

最近手がけた大仕事は、お父様の形見のモーニングコート上下を受け継いだお嬢様が、お洒落着として着て楽しめるようにリフォームしたことです。
モーニングコートは仕立てる職人が日本にも少なくなってきた正礼装服。構造は複雑で様々な工夫が服自体に仕掛けられています。
このモーニングをリフォームする仕事は薄窪が中心になり、伊達、福留理恵子のチームで行いました。蘇ったモーニングコートに命が吹き込まれました。

黒木幸、85歳。昭和10年(1935年)生まれ。
この手によって約70年近く、お客様のお洋服を仕立ててきました。
今もアトリエの魂となってけん引してくれます!

黒木の最新作、ロロピアーナのジャケット。
美しい袖と肩入れは若い職人達の見本です。

今日もひと針ひと針、服作りは進みます。
みなさまのオーダーを心よりお待ちいたしております。
One autumn afternoon in our atelier.
Artisans working for their many dreams….!




三洲堂テーラー
鹿児島市東千石町18-8BIGIビル2F
099-224-6255
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【今日のアトリエ】ベテランから若手へつなぐ技術
2016年8月27日
FALL2016 SEASON IN !!
8月中の秋冬オーダーには各種特典がございます!
アトリエでまた新しい「修行」の一ページが始まりました。
「修行」を始めたのは、パンツ&ウェストコート裁縫担当の宮原です。

高校を卒業し英国ケンブリッジの服飾専門学校で学んだ後、パリのトルコ人の仕立屋で見習いを経験した宮原は、3年前に当店に入社しアトリエに加わりました。

すべての仕立て職人と同じく、修行のスタートはパンツを徹底的に仕立てる事です。
お客様にご満足いただけるパンツ仕立てをマスターした後、すぐにウェストコート(=ベスト、チョッキ)の仕立てを学びます。

先輩職人の加治木が、宮原に本格的な仕立ての初歩から指導しました。明るい性格で普段は陽気な加治木ですが指導は厳しく、宮原を「がる(怒る)」こともしばしありました。

加治木は宮原を指導すると同時に、超ベテラン職人の黒木からジャケット仕立ての技術を学び、現在ではお客様のお洋服のお仕立てで活躍しています。

約3年パンツとウェストコートを作り続け、遂に宮原のジャケットの仕立て修行が始まりました。
ジャケット仕立てを指導する先輩は、もう10年活躍している大迫です。
大迫は裁縫士の故吉元から技術を伝承され、現在当店で最も難しい仕事を任されています。

大迫は吉元譲りの「緻密」なきめの細かい仕事が得意です。
若い宮原が、吉元から大迫へ伝承してきた「縫製の技術」を習得し、店の戦力になるまでしばらくの時間が必要です。

裁断士の伊達も、前任者の川路からおおよその製図や裁断の手法を伝授されました。川路が辞めた後、お客様にご迷惑をかけない為にも、猛勉強して現在の「裁断士」の腕を磨きました。

店の歴史は流れつつ、その粋(すい)である「技術」は伝承され、現在の若手につながれていきます。


代表の自分は、生地とデザインのプロフェッショナルであると同時に、彼らアトリエの職人たちが存分に腕をふるえるように仕事を創っていくことが使命です。


ますます成長していく若手職人を一人前にするためにも、皆さま是非スーツをご新調される際は、「三洲堂テーラー」をよろしくご利用のほどお願い申し上げます!!
【裁断士日記】裁断士、伊達です。
2016年3月13日
三洲堂テーラーの裁断士 伊達です。
裁断士を任され、気がつけば、もう一年以上がたちました。
時の経過は、早いものです。

前任である私の師匠は、色んな意味で厳しい方でした。
今思い返してみれば、教えてくれる事は全て師匠の職人としての自己の経験則に基づく、「身体で覚えている技」で、私としては中々理解に苦しむ事ばかりでした。
結果として自力で考えなくてはならず、まさに「技術は見て考えて盗め」の世界を痛感しました。
正直、私にとって、地獄の様な日々でした(笑)。
しかし、学ぶという事の難しさと大変さを改めて思い知らされた。
そんな日々でもありました。
本日は、「裁断士の仕事」とはどういったものか、少し簡単にご紹介できたらと思います。
まず、何よりも大事なことですが、お客様のお身体の「寸法」と「癖」をしっかり正確に”採寸”していきます。

その際に私は、お客様の頭のてっぺんから足の先まで、舐めまわすかの様に、鋭い眼光を飛ばしながら観察しています。
時々ボディタッチも踏まえるなど、何やら嫌らしい感じですが、決して、そんなつもりはございません!ご安心を(笑)。
お客様の正確な寸法と癖を採寸する為には必要なことなのです。

次に採寸したデータをもとに、”型起し”をします。
お客様お一人お一人のご体格など思い浮かべながら、最後は立体になる型紙を、平面から作り上げていきます。
この作業が私にとっての腕の見せどころです。

そして、いよいよ生地を切る「裁断」の作業に入っていきます。
型紙を配置する場所など、この作業では、神経と精神力をフル活用しています。
なにしろ当店の生地はとても上質で高額品も多く、間違いがあってはならない世界です。

次に、「仮縫い」の着せ付けをします。ここで自分が型起こしをした結果が合っているのかが試されます。緊張するひと時です。
無事仮縫いが終了したら、そのデータをもとに型紙と生地の「補正」をします。
補正済みの生地と、仕立ての要点をまとめて、縫製士の職人さんにバトンをつなぎ、上着とズボンの職人さんがそれぞれ本縫い作業に入ります。
その他、細かい仕事も沢山あります。
簡単な説明ではありますが、仕事の大きな流れとしてはこんな感じです。

まだまだ、経験知不足ですが、私、裁断士伊達は、誰よりもお客様の事を考えながら仕事をしています!
これからこの「裁断士日記」でアトリエの細かい仕事や、テーラーならではのトピック、またマニアックな事柄など、今後色々とご紹介していけたらと思います。
ご来店の折には、アトリエのガラス越しに作業をしておりますので、
今後ともよろしくお願い申し上げます。
カッター伊達
【今日のアトリエ】テーラーならではのユニークな道具たち
2015年12月10日
12月10日にもなりますと年内あと20日程しかないわけで、年内納品の為にアトリエの職人たちは多忙を極めます。20年ほど前までは12月は全く休みを取らずに、ぶっ続けで縫製していました。さすがに現代では許されませんし、お客様のニーズがより細やかになってきていますので、職人も休息なしではやっていけません。
この季節、仕上がったお洋服は検品され、即納品されていきます。
冬は足踏み状態なのですが、さすがに12月の末になると300g/以上の冬服も必要になり ます。
生地も重くなると、職人の体力もそれなりに必要になります。


ところで、彼らアトリエの職人たちが使っている道具の名前は、とても面白いニックネームが付けられています。しかも昔からこの名前だったようで、正式名称は?とベテランに聞いても判りません。
しかし、なんとなく共通事項があるようです。

上の写真は「鉄マン」という道具です。基部が鉄製の頑丈なミニアイロン台です。ほぼ毎日使われます。
下の写真のように主に袖を成形する時に使いますが、ジャケットの各パーツの仕上げでも頻繁に活用します。だけではなくパンツのアイロン加工に使われます。各職人一人一台持っています。

下の道具は単に「まんじゅう」といいます。ジャケットの襟の成形や身頃のカーブ、パンツの臀部の丸みを出すための道具です。これも一人一個持っています。

これは「チーズボード」と呼ばれる、襟の仕上げに使うアイロン台の一種です。
「チーズボード」は普通はチーズをカットする板の事です。アトリエでの名称も昔から「チーズボード」だったようで、この呼称の源流はどこなのか和製英語なのか、英国の仕立屋に一度名称を確認したいと思っています。2,3人で1台を共有しています。

写真のおでんに入れるちくわぶ状のものは、「袖マン」と呼ばれます。
袖の中に通してアイロンをかけるための道具です。ただし使わない職人もいます。レディス服の仕立てでは、肩のいせ込みなどにもよく使われます。

下の写真は「なまこ」です。
いろんな形状がありますが、いわゆる「カーブ尺」といわれるものと同じ形状です。
ジャケットのパーツは、ラペルから胸ポケット、袖や身頃の縫線まで、様々なカーブが描かれています。裁断士から大まかなパーツを受け取った裁縫士は、より細やかな作業を、「なまこ」の描くカーブを参考にして生地をカット、縫い上げていきます。

ということで、皆様お気づきの通り、ほぼすべての道具が「食べ物」由来の名称です。昔のテーラーの工場(アトリエ)では、常にお腹を空かしながら作業をしていたのでしょうか。
「まんじゅう」系は日本独特の風俗からこの呼称が付いたのかもしれません。

私が子供の頃のアトリエは祖父の代の頃からの職人在籍していて、サイズもセンチだけではなく、「尺寸」を使っている職人もいました。こまやかにサイズ合わせをする際にうまく意思が伝わらず、困るようになり「センチ」を標準としましたが、彼ら昔堅気の職人は最後まで計算尺の様な物差しを持っていたものです。

彼らの実際の仕事のご紹介はこのページです
今回は道具をご紹介しましたが、次の機会があれば古いテーラー業界に伝わる仕立ての用語や名称をご案内したいと思っています。