西郷さんの軍服や大久保利通のフロックコート、ニッカボッカに旧制高校のマントなど、様々なお洋服をお仕立てしている三洲堂テーラーですが、今回ご紹介するスーツもめったにお目にかかれない服です!
当店の福留理恵子と並んで立っているお客様が着ている服は、昭和世代には懐かしい「短ラン」と「ボンタン」の組み合わせのスーツです。
「短ラン」はその名の如く丈の非常に短いジャケットです。普通はツメ襟ですがこのスーツはノーマルなノッチラペルでお仕立ていたしました。
「ボンタン」の語源はやはり鹿児島県阿久根名産のかんきつ類、「ボンタン(文旦)」から来ているようです。超ハイウエスト、腰回りから太もも周辺はなんと巾55センチのたっぷりとしたワタリ巾です。
ボンタンのベルト位置から股上の頂点までは非常に深く、38センチあります。ベルト位置からウェストの頂点までの深い帯部分には釦が4個付いています。
また、帯部分はしっかりした毛芯を入れ、さらに接着芯を上乗せして硬く仕上げています。まさに腰折れしないように作りました。
ハイウエストの背中はVカットされ引き締まった身体に沿って上がります。
背中央のベルトループは伝統的にクロスがけです。
ジャケットはシングル1個ボタン。
袖も一個ボタンをお付けしました。
まさに絵に描いた様な「短ラン&ボンタン」ですが、何故かヤンキーぽさが少なく、とてもクラシックなエレガントな雰囲気が出ました。
少し宝塚歌劇団の歩合衣装の様な、あるいは近代の東ヨーロッパのダンディな遊び人のような、不思議な雰囲気です。
生地はイタリア、カノニコ(CANONICO)の300g/mのブラックウール。
光沢とある程度の重量がなくては、このような服は出来ません。
偶然ご来店されていたお客様のお持ちになった、「トンビ」コートをお借りして着てみました。
お客様は15歳の頃短ランとボンタンにあこがれていたけど、着れなかった。
いつかは着てみたいと思っていて、ついに35歳の今夢がかなった、とお慶びいただきました。
そんなことを言われるとき、
テーラーをやっていて良かったな、と思います。
皆様もご自身の想いのある服を、実際に着てみませんか?
スーツS上下・お仕立て上りプライス(税別)・・¥178000~