葛利毛織工業は愛知県一宮市に位置する、1912年(大正元年)創業の老舗毛織物メーカー(ミル)です。今でこそ業界では有名なのですが、私はテーラーとしては比較的早く本社工場を訪ねたことがあります。
その風格ある門構え、切り屋根の「らしい」感じの工場、なによりもそこで実際に稼働している「ションヘル織機」を見て感動しました。
葛利毛織で生産する生地の特長は何と言っても、その「風合いの良さ」としっかりとした打ち込みからくる「しなやかさ」です。その特長は80年前から使っている「ションヘル織機」というドイツ製の織機を使って、低速ながら丁寧に生地を織り上げることで生まれます。
ションヘル織機は緯糸のシャトル(糸を左右に運ぶための杼(ひ))を通すために、経糸が大きく上下に屈曲します。この屈曲分の空気を生地が含むことによって、弾力性やふくらみ、腰が生まれます。糸が伸び切っていない分、出来上がったスーツやジャケットを着るほどに体に馴染んでくれるのです。
ちなみに・・・このドイツ製の重厚な織機は、現場でフル稼働しているために、常にメンテナンスを継続しなくてはなりません。そしてそのメンテナンス作業はを請け負っているのが、地元のメーカー、世界の「トヨタ」です。愛知県の企業文化と風土がうらやましくなります。
今回お仕立てしたスーツは、葛利毛織の夏の高級素材、キッドモヘア(49%)、ウール(43%)、シルク(8%)、210g/mのダークネイヴィーでお仕立てしました。
キッドモヘアの張りのあるしなやかさと光沢で、立体的な良い仕立て上りになりました。
肩から胸回りを経て、ウェストからヒップに至る美しいドレープは、男性のスーツ美を表現しています。
ボタンは伝統的な練り釦、ライニングは同系色。
もっともオーソドックスに仕立ててほしいとのオーダーに応えました。
お客様は、仕上がったスーツを着用されて、公的なご用事で海外にご出張されます。
そこで待っているレセプションや行事にお役に立てれば幸いです。
葛利毛織さんには、このモヘアスーツ生地以外にも、秋冬のフランネルから極細番手の艶やかな生地まで、多数の生地コレクションがございます。
当店にも生地バンチブック(見本帳)がございますので、ぜひ触れてみて下さい。
葛利毛織 ドミニクス(DOMINX), Wool53%,KidMohair(49%),Silk(8%) 210g/m
スーツS上下・お仕立て上りプライス(税抜き)
BESPOKE(仮縫い付きハンドメイド)・・・¥189,000
SARTORIA(パターンメイド)・・・¥84,400