テイラー&ロッジの「攻めている生地」で仕立てたスーツが完成しました。
ライトネイヴィーの織ストライプ、玉虫色に光沢とドレープを放つこのスーツ、写真で見てもかなりドレッシーです。
こんな生地を英国を代表する老舗ミルが生産している事に、彼ら英国人の持つ服飾文化の深みを感じます。
余談ですが、英国の文化、とりわけロックミュージックの世界では飛び切り急進的なムーブメントが一定のサイクルで発生します。
70年代初頭から中盤にかけて、ロック市場を制していたのは、レッドツエッペッリン等のハードロックやピンクフロイド等のプログレッシブロックを中心とした超絶テクニックを誇るビッグバンドでした。
一方、そんな状況を苛立ちの眼で見てたのは、最もロックを欲していた10代の若者達でした。
当時のイギリスは「英国病」と云われるような不況の真っ只中。若い世代の失業率は上がり、保守的な階級社会に対する不満も渦巻いでいました。
60年代には彼ら若者たちの苛立ちを受け止めるバンドは、ザ・ローリング・ストーンズやザ・フーが存在し、皆熱狂したものでした。
特にストーンズのシングル、「ストリート・ファイティング・マン(Street Fighting Man)」は若い連中のどうしようもない苛立ちを叩きつける様な曲です。
私も十代の頃そうでしたが、行き場のないエネルギーのはけ口として、カタルシスを発散できる激しいロックミュージックは大切な存在でした。しかし受け皿となる音楽とバンドが無い場合どうすればいいのか?
その答えが1975年に始まったパンクロックムーブメントです。そのムーブメントを代表するバンドこそセックス・ピストルズでした。
古い話ですが、追体験ながら私も初めてセックス・ピストルズのアルバム「勝手にしやがれ(Never mind the bollocks)」にレコードの針を乗せた瞬間の驚きは未だに忘れられません。
スピード感溢れる単純なスリーコードの激しく短い曲。権威を否定す過激なメッセージ。
ボーカルのジョン・ライドンの破れたTシャツにピンを刺しただけのファッション。ベース奏者シド・ヴィシャスの破滅的な生き方・・・その頃聞いていたツエッペッリンやクイーンがずいぶんスローに聴こえたものです。
パンクロックに傾倒して国内でも話題になっていた、全盛期の日本のパンクバンド、ザ・スターリンのコンサートにも何度か行きました。後楽園ホールではステージに殺到する連中に揉みくちゃになり眼鏡も割れてしまったこともありました。
おお、話題がどんどん「テイラー&ロッジの攻めているスーツ」から離れていきます。ザ・スターリンとボーカルの遠藤ミチロウの話題は後日にしましょう。
つまり何を言いたいのかというと、1800年代から続く老舗の織物工場がリリースするコレクションはほとんどがクラシックな色柄なのに、突如尖ったスタイリッシュなデザインの生地も載っている事が、イギリスらしさを実感するのです。
表生地だけではなく裏地も英国物は国産やイタリア物に比べアヴァンギャルドな柄や色を使います。
伝統あるLBD社のライニングコレクションには、英国製の重厚な表生地からは想像の付かないようなヴィヴィッドな色遣いやポップな柄が沢山載っています。
抑えた表の表情の裏には、エネルギーに溢れた創造性が隠れている。そんなところが英国に辿ってきた紳士服文化の層の厚みを感じるのです。
という事で、こちらのテイラー&ロッジの320g/m、Super160Woolのスーツは大いに英国らしさを感じます。
シンプルなシングル2個ボタン、チェンジポケットとサイドベンツがマニッシュな雰囲気です。
交互に濃淡をもたらすネイヴィーが、バストからウェストに美しいドレープを持つこのジャケットをさらにドレッシーに飾ります。
ボタンは本水牛の明るめ艶あり。
ライニングはブルーが少し入ったグレーのキュプラです。
これからご結婚式や歓送迎会drこのスーツをお召しになるご予定です。
着るお客様の魅力をさらに引き立てる英国テイラー&ロッジのネイヴィースーツがお役に立てる事を願っております。
Taylor & Lodge (テイラー&ロッジ)
LUMB`S GOLDEN BALE Wool 320g/m
スーツS上下・お仕立て上り(税別)
BESPOKE(仮縫い付きハンドメイド)・・・¥222,000~
SARTORIA(パターンメイド)・・・¥107,800~