19世紀末にほぼ現代のようなフォルムに進化をとげた男性用スーツは、約100年強の間微妙なデザインの変遷を繰り返しつつ今に至ります。
ここ100年ほどのどの時代の男たちの群像を写真で見ても、公的な場面ではスーツを着用しています。ただし、同じように見える男性のスーツ姿も、色柄や微妙なデザインが違っていて、そこにその人たちなりの個性が見出せます。
こちらのスーツも、シングルブレスト、2個釦、センターベント。
オーソドックスなスタイルです。ビジネスマンがずらりと並べば、ほぼ同じような姿になるでしょう。
しかし、見えるところや見えないところ随所にお客様なりの個性がさりげなく盛られています。
袖の4個釦は本切羽になっていて重ね付け、という旬なデザインですが、一番下のボタンホールのみエンジ色の糸で穴かがりがされています。
ライニング(裏地)こそ着ている本人にしか判らないものの典型です。
ここでお客様が選ばれたのは、通常は袖裏として使用しているストライプ柄のライニングです。
表のシックな色合いに比較し、脱いだり着たり、手に持ったりする際に、シャープな印象のストライプのライニングがちらりと覗きます。ご本人だけが気付くお洒落でが、もともと日本人男性に伝わる「見えないところにお洒落をする」、という歴史的な嗜好の積み重ねが文化として残っています。
生地はロロ・ピアーナのSuper130。
メランジ調の様々な色糸で織り上げられたシンプルですが、深く美しい光を放つ生地です。
生地の表情が深いと、スーツとして形作られた際にとても上質感が漂います。
肩から袖、ウェストにかけては綺麗なドレープ(陰影的な襞)が出現します。
お客様は早速このスーツを着用してお仕事をされることでしょう。
お仕事に望まれるお客様のお気持ちをそっと高められる、そんなクラシックなスーツをお届することが出来れば、私たちの仕事もより意味のあるものになると思います。
Loro Piana Super130 Wool 300g/m
スーツS上下・お仕立て上り(税別)
SARTORIAパターンメイド・・・¥84,500
※・・・ライニングと水牛釦、袖の本切羽などはオプションになります。