英国の生地屋さんで「夏物の良いモノないの?」、と聞くと決まって紹介されるのが、ウール&モヘアの3PLY生地です。硬質な手触りとひんやり感や通気性は申し分ないのですが、なにしろ重く感じます。
というのも、夏物のくせに平気で300g/m以上のウェイトだからです。
3PLY生地とは、生地を縦横織りあげる為の糸が、もともと3本の単糸を撚り合わせて作られているものです。3本の単糸にはモヘアが使われますから、モヘアの持つ弾力性と光沢が表生地にもはっきりと現れます。
スキャバルやドーメルといった歴史あるマーチャントは、いずれも1970年代から3PLY、4PLYといった重厚なウール&モヘア生地をリリースしてきました。ドーメルのTONIK、スキャバルのTITANなどはその代表格です。
今回お仕立てさせていただいたスーツは、英国の老舗ミル(織物工場)、
ウィリアム・ハルステッド(William Halstead)で織り上げられた、70%Wool&30%Mohair 330g/mの生地で仕立てました。
デザインはシンプルなシングル2個釦、センターベントのスーツ。
個性を発揮するポイントとして、ハンドステッチを施してあります。
生地目付きが330g/mというウェイトは、春夏ものとしてはかなりの厚みです。
しかし弾力性のある素材ゆえに、立体を作るにはとても仕立て易いという特性があります。
仕立て上ったジャケットは、英国生地を英国伝来の仕立て手法で立体的に仕上げてありますがら、まさに身体を包むような着心地となりました。ショルダーからウェストにかけてのドレープも申し分なく出ています。
背抜き仕立てにしてありますので、鹿児島なら3月~11月末までご着用いただけると思います。
夏の英国を旅するならこれ一枚で楽しめます。なにしろ日本の真夏のような酷暑は、8月に一週間ほどもあればいいほうですから。
日本に入ってくる英国製品は数々あれど、伝統産業としての毛織物製品は面々として重宝されています。
ハルステッドのウール&モヘアの3PLY生地のスーツはその典型です。
このスーツを着て本格的なBARで美味しい英国のモルトウィスキーなど、ちびちび飲りたいものですね~!
そういえば、英国はEUに残留か離脱かで揺れています。
歴史をひも解くと、英国はヨーロッパ大陸と海で隔てられている分、昔から「光栄ある孤立」主義をとってきました。EUが作られた際も、サッチャー首相の英断で共通通貨「ユーロ」に参画せず、自国通貨「ポンド」はそのまま使っています。
歴史的にも見ても大変興味深い数日間です。
参考プライス
William Halstead 70%Wool&30%Mohair 330g/m
スーツS上下・お仕立て上りプライス(税別)
BESPOKE(仮縫い付き・ハンドメイド)・・・¥203,000~
SARTORIA(パターンメイド)・・・¥103,000~