私たちが取り扱っている生地には、「耳」が付いています。
生地の耳には、製造した織物工場(ミル)の名前や、生地の品質が表示されています。
当店で見かけた事がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この「耳」には表記されている以外の情報も入っています。
生地には「地の目」というものがあります。洋服になる生地の向きは、上から下へ流れています。その流れの通りに各パーツをカットしなくてはなりません。
服の身頃は上から下への順目ですが、袖だけ下から上への逆目にカットすると、服として完成した場合の色合いや柄行きや毛並みが揃わないのです。
「耳」に記入されているテキストの記入方向と同じ方向に生地の「地の目」が流れていて、その流れの通りに生地をカットすすれば間違いが無いのです。
今日ご紹介するブレザーは、私が自分の着用分で仕立てたものです。
この生地の耳をある部分に使わせていただきました。
というのも、耳の表記が今時珍しかったからです。
ダブルブレスト6個釦、2個掛けのクラシックなスタイルですが、
ピークトラペルの幅を昔風にやや広くとってみました。
生地はウール&コットン&テリレン(Terylene=英国化繊の一種)の三者混紡です。
コットンが入っているのですが、仕立ては従来通りの毛芯仕立てにしました。
背中、肩、バストラインはジャストフィットさせつつ、立体的な仕立てを心がけてみました。
ボタンは夏らしい高瀬貝釦の生成りを選びました。袖も本切羽にしています。
ライニングは英国LBD社の白ペイズリーです。
背抜きの中央部分に、生地の耳が残るように裁断士の伊達がカットしました。縫製職人の黒木にも、生地の耳を残すよう説明しました。
耳のフレーズは、「MADE IN GREAT BRITAIN」(!)。
カッコいいですね~。伝統的な英国毛織物の矜持が感じられます。
生地ネームは英国のDilroyd LONDON(ディルロイド?読みが正確ではありません)。
とにかく数十年前のヴィンテージ生地です。仕入れ台帳も紛失していて詳細が判らないのですが、Dilroydは昔はカシミアなども取り扱ってたようです。おそらくミル(織物工場)ではなく、マーチャントだったのでしょうか?
ということで、この水色のブレザーには、今日合わせているようなライトグレーの正統派トラウザー(ズボン)または、コットンパンツでもコーディネートできると思います。
新しい服は何かのきっかけで、早くおろしたいものです。
この春夏はこのブレザーを伴に走っていく予定です!