2016年、今年は世界中で選挙イヤーになります。
日本でも参議院選挙が予定され、アメリカでも大統領選挙が始まります。
1960年9月26日、アメリカ大統領選挙において初のTV討論が開催されました。
民主党の候補者はジョン・F・ケネディ、弱冠43歳。
意外に思われるかもしれませんが、共和党の候補者は47歳(!)のリチャード・ニクソン副大統領です。
現職の副大統領ニクソン候補は、選挙戦中盤の9月まで全米中を精力的に遊説し、接戦の中ケネディ候補に6%ほどの差をつけて有利な選挙戦を展開していました。
運命の分かれ道になった史上初のTV討論会は、全米で約7000万人が視聴しました。
TVというメディアの重要性を認識していたケネディは、当時の白黒TVの映りを良くする為に、黒に近い濃紺のスーツ、シャツは直前でTV画面に反射しすぎる白をブルーに着替え、休養をたっぷり取って笑顔で登場しました。
対するニクソン候補はTVでは背景がぼやけて見えるグレーのスーツを着用しました。全米を強行軍で遊説していた為、少し病み上がりだったニクソンの顔色は悪く、メイクを「軟弱な男のするもの」と拒否して登場したので、TV画面では顔色がさらに青白く映り、かつ眉と髭のあともが妙に濃い印象で、病弱なイメージをもたれてしまいました。
討論会の内容をラジオで聞いたアメリカ国民は、ニクソンが優勢だという印象を持ちました。それだけ内容ではニクソンが勝っていたのです。
しかし、圧倒的多数の国民は、当時普及していた白黒TVで討論会を観ていたのです。
そして健康で快活な印象のケネディに好印象を持ったのでした。
TV討論会は4回にわたり開催され、後半はニクソン陣営もメディアの重要性を認識してイメージアップに努めましたが、ケネディの第一回目の討論会の印象が圧倒的に良くなりました。
これにより支持率は逆転、11月8日の本選では非常な大接戦となりましたが、ケネディ候補が選挙戦を制し翌1961年にアメリカ合衆国第35代大統領に就任しました。
このTV討論会は後々、メディアを介したイメージが実際の討論の内容を凌駕した例として非常に重要視されるようになりました。各候補はマスメディアを利用することに気付き、マスメディア自体も力を認識するようになりました。
昨年2015年9月に行われたアメリカ大統領候補予備選挙に向けた共和党候補が一堂に会して、TV討論会が行われました。
この討論会には、その言動が注目を集めるトランプ候補、ブッシュ元大統領の弟ジェブ・ブッシュ候補、外科医から政治家に転身した異色の黒人ドクター、ベン・カーソン候補などの個性的なメンバーが11人参加しました。
注目を集めるトランプ候補の効果もあり、全米で2400万人がこのTV討論会を視聴しました。これは予備選挙の討論会としては過去からも含め異例の視聴者数です。
この討論会の写真で判ることは、候補者が全員濃紺のスーツを着ていることと、赤いネクタイとブルーのネクタイの候補が丁度半分ずついるということです。カラーTVの時代になってから、ネクタイの色が非常に重要な要素になりました。
すなわち自分の個性が情熱的なら赤いネクタイ。討論の場でもクールに振る舞える事をアピールしたいなら青いネクタイを締めることが、習慣となってきました。
アメリカの政治家が宣戦を布告したり、大胆な政策を打ち出す時、ネクタイは「闘志」や「情熱」を表現する色の「赤」となります。
一方、その後の会議や報告、加熱する報道熱をさますような場面では、「青」のネクタイで自分の冷静さと理性を表現しているのです。
世界を震撼させたパリのテロ事件発生後、イスラム教徒への差別ともとれる入国制限を訴えたトランプ候補は、やはり赤のネクタイを締めて大きな身振り手振りで情熱的に自分の考えを訴えていました。
さて、この選挙イヤーでは各候補の製作に関する考えや人柄で投票すると思いますが、その際には、各候補者のスーツスタイルもご覧いただきたいと思います。
そして、ご自身のスーツスタイルのご参考にされてはいかがでしょうか?