「ゴージライン」 という名称をごぞんじでしょうか。
ご存知の方は相当なスーツ好きだと思います。
ゴージライインとは、スーツの上衣の上衿と下衿の接続線の事です。
スーツを意識していない方にとって、ゴージライインなど関心を持つ事はまずないでしょう。
しかし、私たち服作りに携わる者や、スーツが好きな方々にはとても重要な「ライン」なのです。
スーツのサイズに関しましては、「黄金比」とも言える英国伝来の標準寸法があります。
上記のイラストがそれです。
①首の付け根から裸足の地面までの長さを「総丈」といいます。
②総丈の半分が「上衣丈」と「股下」になります。
※ただし、「股下」は日本人の平均。白人は違います。
③袖丈は、総丈×40%が平均です。
これさえ覚えておけば、クラシックなスーツのおおまかな寸法はOKです。
時代により、上衣丈が標準サイズから上下します。
この写真は、およそ20年前の「ダックス」のスーツです。
現在と違ってスーツは身体に対して、ずいぶんと余裕を持って仕立てていました。上衣の長さは標準より3センチは長く、肩幅や袖丈も実際の寸法より2センチ以上大きめです。
・・・それにしても違和感ありますね。
ゴージラインは、思い切り下がっています。この写真のスーツに対する違和感は、全体の大きさとともに、このゴージラインの下がり具合に起因するところが多いのです。
時代は変わり、昨日の私のスーツはこのようなシルエットです。
上着丈は、標準値から3センチ短くなり、それとともに釦位置、Vゾーンなど全ての位置が20年前に比べ、上がっていることがわかります。
したがって、上衿と下衿の接続線であるゴージラインも、思い切り上がっています。
すべては、「バランス」の問題です。
皆様が見ているスーツが、古臭く感じられるか、新しいものだと感じるか・・・
全体の大きさが判らない時には、ゴージラインが決め手になります。
そんなお洋服に関する雑学を念頭にいれつつ、街を歩く男性のスーツに目を向けてみると、なかなか面白いものです。