皆さま今年も当HPにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。
今年最初のエッセイは、お正月にちなんでのことです。
以前は当たり前だったのに、習慣的に少なくなってきたことといえば、お正月に備えて、身の回りの物を新調する、あるいは買い換える という習わしもその一つではないでしょうか。
天文館アーケードの老舗バッグ店の樋口社長に聞いたお話では、昭和40年末頃まで、正月の店頭では、山のように並んだ財布が飛ぶように売れていたようです。
天文館に隣接する照国神社に初詣された方々、特に自営業者の方や職人さんたちが、新年の運気を向上させるために、財布を買い換えてらっしゃったとのです。残念ながら今は、そんなお客様はほとんどいらっしゃらないとのことでした。
また、当店でも「お正月の服」としまして、毎年師走やお正月にスーツやジャケットを新調されるお客様が、多数いらしゃいました。新しい服を着て、気持ちを新たに切り替え、仕事に臨む。こうしてモノがあふれる今の時代でもその気持ちはわかります。
昨年末最後にご納品させていただいた数着のお洋服も、そういった「お正月の服」でした。
今日ご案内するのは、その中の一着です。
「大切な時」に着るスーツ・・・。生地はイタリアの高級生地メーカー、ロロ・ピアーナ社を代表する「Winter Tasmanian」です。
この「ウィンター・タスマニアン」生地は、私が家業に参加した19年前は、ウールのSuper120、320g/mでした。
その当時、Super120ウールは珍しい高級品でしたが、そのSuper120生地をバンチブック(見本帳)に色柄揃えて、ずらりとラインナップさせた、ロロ・ピアーナ社は前年に日本法人を作り、意気軒高に自信作をPRしていたものです。
当店にとっても、上質生地の定番品になった「ウィンター・タスマニアン」ですが、数年後にはSuper130規格になり、現在ではSuper150規格になりました。
観て、触れて、着て、その上質感を実感してしまう、Winter Tasmanian。
そのスタンダードなダークネイヴィーは、正に「壇上の服」というべき、人生の大切なひと時に着用いただきたいスーツに仕立て上がります。
大事な方との面談、大切な会議、壇上であいさつする時・・・、濃紺無地のこのスーツがが、貴方のお役に立ちます。自分に自信を与えるとともに、相手に信頼感を持たれることは間違いがありません。
その人の服装、なかでもスーツスタイルは、単純な表現の手法の一つですが、自分自身のバックボーンや考えといった目に見えないその人となりを、自然に周囲に醸し出す役割があります。
映画「華麗なるギャツビー」は、謎めいた成功者である主人公ギャツビー役を、俳優ロバート・レッドフォードやレオナルド・ディカプリオとしった、アメリカを象徴する美男子たちが演じています。
映画の中で、 すばらしく似合っているオフホワイトのスーツを着たギャツビーと対面した、由緒ある富豪のトム・ブキャナンは、「オックスフォードを出たやつがあんなピンクのスーツを着るもんか!」と、ギャツビーの出自を疑う陰口をたたきますが、こんなシーン一つとっても、スーツスタイルは、両刀の剣だと判ります。
私たちスーツをお客様に勧める側も、BESPOKEという言葉の原点を心がけながら、仕事をしていこうと思うお正月でした。
さて、本年も三洲堂テーラーを、そしてこのHPを、ご愛顧のほど、みなさまよろしくお願い申し上げます!