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【映画】「鑑定士と顔のない依頼人」、ヴァージルのスーツ

2014年2月20日

ミステリアスな映画「鑑定士と顔のない依頼人」。

 

衣装協力はジョルジオ・アルマーニ。

主人公を演じる俳優、ジェフリー・ラッシュの難しいいかり肩体型に、実に上手にジャケットをフィットさせています。

 

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姿を現わさなない依頼人から美術品の鑑定依頼を受けた美術品鑑定士、ヴァージル・オールドマン。

 

内容は映画をご覧になって欲しいのですが、ミスタ・オールドマンは、「孤高」「有能」「富裕」「冷徹」といった性格を見事に演じています。

その表現力には、「服装」が大きな要素を占めています。

 

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冒頭、レストランで独り夕食のコースをとるオールドマンは、ダブルブレストのダークスーツに、高級だが地味目のネクタイ、革の手袋をつけています。

 

ペアや友人同士のテーブルが多い中、独りでコースとワインを頼み、にこりともせず食事。しかも、お店の用意した誕生日の記念ケーキを「誕生日は明日だから」と断る。周囲と壁を築き、傲岸な雰囲気を漂わせつつ、つまらぬ感情に左右されたくない・・・そんな感情がダブルブレストのダークスーツから漂っています。

 

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ヴァージルには人に言えない秘密の楽しみがあります。

 

スペアの手袋がずらりと並んだ棚のスイッチを押すと、そこには電子ロックのかかった部屋があります。中に入ると・・そこは、ヴァージルが自ら落札した世界中の美人画が壁いっぱい飾られています。

 

映画に真実味をもたらすために、このシーンは何と正真正銘本物の絵を美術館から借り受けて撮影したということです。・・・なんと7割が、本物の作品です。

 

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・・・スクリーンいっぱいに映るこの部屋のシーンは本物の力があります。

 

ヴァージルは独り、にこりともせず絵の中の女性たちを眺め愉しんでいます。表情は変わらないものの、ダブルのジャケットのの前ボタンは外れている・・・この表現だけで、ヴァージルがこの世界だけを愛していることが判るシーンです。

 

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中盤の盛り上がり、顔のない依頼人がついに登場します。依頼人は外出恐怖症の若い美人、クリス。仕事上の事もあり、また不思議な構造をもつメカの断片の謎ときもあり、次第にクレアに関心を持つようになるヴァージル。

 

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鎧のようなダブルのダークスーツは、シングルになったり、グレーのフランネルやグレンチェックになっていきます。

服の柄と素材で表情の硬い主人公の心境の変化を描いていきます。

 

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物語が進むにつれ、観客は初老のヴァージルの恋の行方を応援したい気持ちと、映画に流れるエンニオ・モリコーネの不安感を醸し出す音楽に、何かとんでもないことが起きつつあることを予感するようになります。

 

 

・・ここからはネタばれですのでもう止めましょう。

 

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映画の最後、ヴァージルの表情には不思議な希望が漂っています。

 

プラハのカフェのヴァージルのスーツは威圧感も無くなっています。

残念ながらこのシーンの写真はどこにもありませんでした。

 

 

・・・・ということで、ぜひ映画をご覧になってください。美と大人の恋心とミステリーを堪能できること間違いなしです。

 

鹿児島では、近くの天文館シネマパラダイスで公開予定です。

http://tenpara.com/index.html

【華麗なるギャツビー】「大切な時」に選ぶスーツならこの一着

2014年1月4日

皆さま今年も当HPにお立ち寄りいただき、ありがとうございます。

 

今年最初のエッセイは、お正月にちなんでのことです。

 

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以前は当たり前だったのに、習慣的に少なくなってきたことといえば、お正月に備えて、身の回りの物を新調する、あるいは買い換える という習わしもその一つではないでしょうか。

 

天文館アーケードの老舗バッグ店の樋口社長に聞いたお話では、昭和40年末頃まで、正月の店頭では、山のように並んだ財布が飛ぶように売れていたようです。

天文館に隣接する照国神社に初詣された方々、特に自営業者の方や職人さんたちが、新年の運気を向上させるために、財布を買い換えてらっしゃったとのです。残念ながら今は、そんなお客様はほとんどいらっしゃらないとのことでした。

 

また、当店でも「お正月の服」としまして、毎年師走やお正月にスーツやジャケットを新調されるお客様が、多数いらしゃいました。新しい服を着て、気持ちを新たに切り替え、仕事に臨む。こうしてモノがあふれる今の時代でもその気持ちはわかります。

 

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昨年末最後にご納品させていただいた数着のお洋服も、そういった「お正月の服」でした。

 

今日ご案内するのは、その中の一着です。

 

「大切な時」に着るスーツ・・・。生地はイタリアの高級生地メーカー、ロロ・ピアーナ社を代表する「Winter Tasmanian」です。

この「ウィンター・タスマニアン」生地は、私が家業に参加した19年前は、ウールのSuper120、320g/mでした。

その当時、Super120ウールは珍しい高級品でしたが、そのSuper120生地をバンチブック(見本帳)に色柄揃えて、ずらりとラインナップさせた、ロロ・ピアーナ社は前年に日本法人を作り、意気軒高に自信作をPRしていたものです。

 

 

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当店にとっても、上質生地の定番品になった「ウィンター・タスマニアン」ですが、数年後にはSuper130規格になり、現在ではSuper150規格になりました。

 

観て、触れて、着て、その上質感を実感してしまう、Winter Tasmanian。

そのスタンダードなダークネイヴィーは、正に「壇上の服」というべき、人生の大切なひと時に着用いただきたいスーツに仕立て上がります。

 

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大事な方との面談、大切な会議、壇上であいさつする時・・・、濃紺無地のこのスーツがが、貴方のお役に立ちます。自分に自信を与えるとともに、相手に信頼感を持たれることは間違いがありません。

 

その人の服装、なかでもスーツスタイルは、単純な表現の手法の一つですが、自分自身のバックボーンや考えといった目に見えないその人となりを、自然に周囲に醸し出す役割があります。

 

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映画「華麗なるギャツビー」は、謎めいた成功者である主人公ギャツビー役を、俳優ロバート・レッドフォードやレオナルド・ディカプリオとしった、アメリカを象徴する美男子たちが演じています。

 

映画の中で、 すばらしく似合っているオフホワイトのスーツを着たギャツビーと対面した、由緒ある富豪のトム・ブキャナンは、「オックスフォードを出たやつがあんなピンクのスーツを着るもんか!」と、ギャツビーの出自を疑う陰口をたたきますが、こんなシーン一つとっても、スーツスタイルは、両刀の剣だと判ります。

 

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私たちスーツをお客様に勧める側も、BESPOKEという言葉の原点を心がけながら、仕事をしていこうと思うお正月でした。

 

さて、本年も三洲堂テーラーを、そしてこのHPを、ご愛顧のほど、みなさまよろしくお願い申し上げます!

【プロフェッショナル・仕事の流儀】パリのテーラー、鈴木健次郎さんの回を観て

2013年12月11日

12月9日放送の、NHK「プロフェッショナル・仕事の流儀 ~パリの新風 一針の美学」をご覧になった方も多かったと思います。

 

http://www.nhk.or.jp/professional/2013/1209/

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パリのテーラー、鈴木健次郎氏のショップ兼アトリエは、まるで当店と同じような作りです。

 

そこで、生地やスタイルを選び、デザインを決め、個々人の型紙を、その店の流儀でスタッフが型起こしする。職人の手で仮縫い補正をして、最終的に手縫いにより一針一針縫って仕立てる。これが「BESPOKE」です。

 

昨日は当店にも、放送についての感想や、問い合わせなどをいただき、皆さまの関心の高さがうかがえました。この番組は結構見ている方ですが、久しぶりに「プロフェッショナル」な内容で、いつにも増して、面白い回だったと思います。

 

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内容は、再放送が今週12月13日金曜日深夜に放映されるので、それを観ていただきたいのですが、テーラーとして共感できるシーンが沢山ありました。

 

BESPOKE(仮縫い補正付きハンドメイド・・・すなわち本当のオーダーメイド)と既製品の違いは、仕上がった洋服の立体感にある、という事が述べられていました。その通りです。手縫いにより、立体的な胸の構築ができますが、それは、バストから胸にかけてのマニッシュな逆三角形をデザインされていてこそ、引き立ちます。ラペル=下襟は釦の上から、しなやかにロールしていますが、ここにも「手」によって「八刺し」が入り、きれいなカタチが仕上がります。

 

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お腹の出たお客さまからのオーダーを受けて、ジャケットの製図をするのですが、釦位置の割り出しと、ラペル(下襟)の線をどのように引くかというシーンが出てきました。私たちも、実際に丸く突き出たお腹のてっぺんに釦位置はしないと思いますが、これも「仮縫い」着せ付けなしでは、判らないものです。

 

そして、肩やお腹のバランスを、「ミリ単位」で調整することで、出来上がりに差が出てくる・・・。

その通りですね。

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大物弁護士からの依頼による、「トラベルジャケット」。そのクライアントは服の出来上がりに厳しく、今までも何回か型起こしを重ねて、仕立てに悩んでいる・・・というシーンには、とても共感しました(笑)。判ります、その気持ち。

 

ジャケットのポケットは、ポケットの上にもう一つポケットが乗る。しかも上のポケットはフラップ付きの観音開き。ハンドステッチを施さなくてはならない。その上、生地が夏物のフレスコっぽい薄手。

このシーンを職人たちと話しましたが、「ため息がでるよね」ということで一致しました。

 

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そのジャケットのポケット部分について、「もしダメ出しを喰らったら、別生地で提案して作り直そう」と、奥様と話す鈴木氏。結果、お客様は「トレビアン!」とおっしゃり、ご満足いただけました。

 

ほっとした鈴木さんと奥様の表情は、まるで私たちの日常そのものです。

 

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印象に残ったお客様の言葉、

 

「・・・・自分の服を満足いくように作る。しかも手縫いでね。判らないかもしれないがそこが好きなんだ・・・」。 

 

その通り、服好きのお客様は、洋の東西を問いません。

 

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鈴木氏の真摯な姿勢は、私たちテーラー業を始め、モノ作りを営む人たち全てに共感できるものです。

 

私は、番組を観終わって、とてもすがすがしい気持ちになりました。

ということで、見逃した方、今週金曜深夜はぜひご覧ください!

 

 

さて、今日も明日もその先も、「一針の美学」を追求する日が待っています!!

 

 

 

【OPERA ARIA】イタリアオペラはこう歌う! 

2013年9月28日

先日9月25日に鹿児島で開催された、「OPERA ARIA イタリアオペラはこう歌う!」に行って参りました。

 

イタリアから、現在人気・実力ともに急上昇中のソプラノ歌手、クリスティーナ・ジャンネッリ(Cristina Giannelli )さん、 テノールのジャンニ・レッチェーゼ(Gianni Leccese)さんのお二人が登場、

ヴェルディの楽曲を7曲、プッチーニほか、近代の作曲家の楽曲を7曲歌われました。

 

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写真は、クリスティーナさんですが、サインはジャンニさんのものです。

 

しかし・・・・まさに、一曲目から本場のイタリアオペラ歌手の実力の凄さを見せつけられました。

テノールのジャンニさんの高々と朗々とした歌、そしてクリスティーナさんの会場を圧するソプラノの美声には、演者の魂がコンサートホールを駆け巡り、私たちの心までイタリアの劇場に連れていってしまうかのような迫力です。イタリア語が解らなくとも、伝わってくる心象表現に驚きましたが、これも演者の持っている才能プラス、日々積み上げてきた鍛錬の成果だと思います。

 

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テノールのジャンニさんは、光沢のあるシルキーなチャコールグレーのスリーピースを着ていました。ジャケットは丈が長めで、フロントカットもほぼ角にしてあり、いかにも「テノール歌手」という雰囲気です。

 

写真は、コンサート終了のあと、ホールに出てきて、気さくにファンと交流されているジャンニさんにお願いして、撮っていただきました。

すっかりリラックスされていますが、演ずるときの力強さには驚かされます。

 

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ソプラノのクリスティーナさんには、サインを待つファンの方々の長蛇の列ができていましたが、合間を縫って写真を撮らせていただきました。

 

写真では、スマートな美しい歌姫のように見えますが、舞台ではその存在は大きく、これはジャンニさんもそうなのですが、お二人ともご身長は優に180cm超えてらっしゃるのかと思いました。実際は175cm位なのでしょうが、それほど体格が良く見えるのです。

 

クリスティーナさんは、お身体が一つの楽器と大容量のアンプであるかのように歌われます。

 

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ジャンニさんとクリスティーナさんの共演も楽しく、お二人の熱演に、会場の熱い拍手は鳴りやまず、アンコールも3曲、スタンダードナンバーを演奏していただきました。

 

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普段、「美術」を意識する仕事をしていますが、音楽と云う「藝術」には、文化と国境を越えて、心を打たれ時を忘れさせる素晴らしい感動があります。こうした藝術への感謝の気持ちを、私たちのBESPOKE SUITS の中に込めて、日々の仕立てに生かしていけたらと思うひと時でした。

 

ちなみに、当日のスタイルは、ピークトラペルのブラックの光沢あるモヘアウールのジャケットに、デニムダンガリーのシャツ+ニット素材の蝶ネクタイ、パンツはジーンズ、靴はこげ茶のジョン・ロブのストレートチップでした。

 

皆さまも、このような催しがありましたら、お誘いいたします!

ぜひドレスアップしてご一緒しましょう!