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【エッセイ】映画「ワーテルロー(Waterloo)」と指揮官たちの服装

2016年10月9日

映画「ワーテルロー」は、1970年に製作されたソ連・イタリア合作の超大作戦争映画でした。

 

 

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CGの技術が全くない当時、戦場の模様、軍装、兵器、1815年頃のパーティーシーンなど、せべてが手作りで作られ、アナログで撮影されています。

今でも映画を完成させるには大変な労力が必要です。そう考えると、当時の大作と云われる映画、「ベン・ハー」や「アラビアのロレンス」などはいかような熱意と手間暇をかけて製作されていたのか、想像もつきません。

 

 

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この映画はその名前の通り、ナポレオンが敗北した最後の会戦「ワーテルローの戦い」の一日を史実に沿って描いています。開戦前のちょっとした幕劇はあるいものの、映画のほとんどは史上まれにみる激戦を、ロシア人の監督がソ連陸軍の最大限の協力を得て撮影しています。

 

 

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英国軍を率いるウェリントン公爵を俳優クリストファー・プラマーが演じています。この人もキャリアが長い俳優で、私も沢山の出演作を観てきました。しかし、この作品のクリストファー・プラマーは長いキャリアの中でも、最も光り輝いています。

 

 

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戦場に一人立つウェリントンは、目の覚めるようなブルーのシングルジャケットに白いパンツ、上襟はスタンドカラーとなっています。シャツの胸元には勲章を下げるリボンが美しいネクタイのように配されていました。

 

 

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凄絶な戦闘の最中、白馬に乗り指揮を取る彼の周囲は、英国伝統の赤い軍服(レッド・コート)の将校が固めていて、そのシーン自体が絵になります。

 

 

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写真左の俳優ジャック・ホーキンスは勇猛なピクトン将軍を演じています。ご覧のようにピクトン将軍はダブルのフロックコートに雨傘を持つ、典型的な英国紳士姿です。

事実、戦場に軍服が届くのが遅れ、このような平服で指揮を取ったようです。彼が指揮する陸軍師団が前進する際には、バグパイプ奏者が随行し聞きなれたあのメロディーを奏でます。

不釣り合いの様で何故か戦場に響き渡るバグパイプの音色に闘争心が掻き立てられるのでしょう。

 

 

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映画では、英国側の無謀なスコットランド騎兵の突撃の失敗と、これも効果が無かったフランス軍の近衛騎兵隊の英国方陣への攻撃なども描かれます。スコットランド騎兵は赤と金、フランス騎兵はブルーとグレーの軍服です。

 

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騎兵は花形だったのでしょう、両軍とも彩り豊かな軍服、サーベルを光らして突撃するその美しさは、実写ならではの映像です。

 

 

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忘れてはならない主役、皇帝ナポレオンを演ずるのは俳優ロッド・スタイガー。

伝説の英雄でありカリスマ指導者としての貫録を感じさせながら、中年になり少しづつ体力や判断力が鈍りつつ指揮をするナポレオンを見事に演じています。

 

 

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これぞナポレオン・カラーという彼の代名詞となったコートを着て、馬形帽を昔風に横にかぶり、小太りの身体に後ろ手を組んで戦争の指揮をする。英国軍がウェリントンと幕僚たちのチームで指揮をするのと違い、すべての命令がナポレオンという権力者から発する。・・・そして負けていく。孤独が伝わってきます。

 

 

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ロッド・スタイガーはナポレオンになりきって演じています。敗色濃厚な会戦の終盤、これまで皇帝に従ってきた歴戦のベテラン近衛連隊の最後の突撃と共に馬を進ませがらも、政治的な配慮で周囲から断られ、寂しく戦場を去るナポレオンを背中だけで表現していました。

 

 

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軍服やドレスの作製にどれほどの資金を投じたのか判りませんが、19世紀初頭の絵画でしか分からない当時の服装が甦る贅沢な映画だと思います。

 

 

 

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日本語字幕版も久々に復活したようです。よろしければ、一度ご覧になってはいかがでしょうか?

 

 

【新作品】TV「にじいろジーン」さんで職人、加治木が仕立てたジャケット

2016年3月4日

全国でも珍しい女性のスーツ仕立職人、加治木がTV番組「にじいろジーン」さんの番組中に仕立てたジャケットをご紹介します。

 

 

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本格的なBESPOKE TAILOR(=ビスポークテーラー)の洋服仕立ての工程は、ジャケット、パンツ、ウェストコートなどを、全ての工程を一人の職人が手とミシンで仕立てます。別名「丸縫い」ともいわれます。

 

 

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現在国内に全行程を手掛ける現役の仕立て職人が、約2000人ほどいると云われています。

 

三洲堂テーラーには加治木のようにジャケットまで仕立られる職人が4人、トラウザーズ(パンツ)とウェストコート(ベスト)専門仕立て職人が2人、カッター(裁断士)が1名、補正専門が1名の7名が在籍しています。

 

 

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加治木が番組中に実際に仕立てていたジャケットは、シンプルなシングルブレスト、2個ボタン、センターベントのデザインです。

 

ただし、ジャケット全体にハンドステッチを入れ、袖の切羽は3個釦の本開きにしてあります。

 

 

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取材ではジャケットの「フェイス」である、ラペル(下襟)に「ハ刺し」と呼ばれる作業をしていました。これは洋服の「表生地」と、服の土台になる「毛芯」とを付け合わせる作業です。

 

この作業の力加減と細やかな「ハ刺し」により、ラペルが身頃からきれいに立ち上がり、美しくロールする事になります。

 

 

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細やかな手仕事で衿の美しいロールが生まれました。アイロンワークだけでは無い、手仕事の縫製により生まれた立体感は、何年使っても消えません。そこが「毛芯」を使う意味でもあります。

 

 

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一つ一つのパーツ作りにも細やかな注意が必要ですが、ジャケットが完成する最後の袖付け作業はどんなベテランでも緊張します。アームホール(小)と袖側の穴(大)の大きさの違いは、「いせ込み」という作業をしつつクリアされ、立体的な袖付けがされます。

 

 

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一つ一つのボタンホールも全て手縫いになります。

ミシンでやれば簡単な事ですが、ボタンホールは手縫い仕事の基本です。従って当店には多機能ミシンが用意されていません。

 

 

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このジャケットに施されている「ハンドステッチ」は、本当の仕立て職人が一つ一つ手作業で入れていくハンドステッチです。生地に沈み込む工業用のステッチミシンとは違い、生地から浮き出てくるステッチこそ「手縫い仕事」。英国を起源として、世界中に延々と伝承されてきた歴史を感じさせる「装飾法」の一つです。

 

 

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このジャケットを仕立てた加治木には、宮原という弟子も付いています。

 

 

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加治木が教わった仕立ての技術をさらに宮原にも受け継ぎ、お客様にご満足いただける服を仕立てて続けることがBESPOKE TAILORの役割だと思います。

 

 

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実はこの生地はもともとスーツ用として仕入れました。

しかし、撮影の都合上でジャケットだけが仕上がりました。

 

しかも無駄にならないよう私のサイズで仕立てたのです。

 

・・・・さてズボンをどう合わせてジャケット+パンツとしてコーディネートするか。エンジのストライプが効いてるし、意外に難しいしなあ・・・などと思案中です。

 

 

 

 

 

 

 

 

【007 SPECTRE】クレイグ・ボンドの衣裳的見どころ

2015年12月18日

映画「007スペクター」が公開されましたので、さっそく鑑賞してきました。

 

ダニエル・クレイグ扮する主人公ボンドのスーツ担当は「トム・フォード」。今の007シリーズに漂う雰囲気に、スーツがとても合っています。

 

 

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昔からの007シリーズ好きにとっては、「スペクター」というキーワードに敏感に反応してしまいます。

 

冷戦下の007シリーズでは悪の組織は「ソ連」か「スペクター」でした。特に「スペクター」のボス「ブロフェルド」役で記憶に残っているのは、俳優ドナルド・プレザンスが演じていた「ブロフェルド」です。

 

スタンドカラーのジャケットを着て、冷徹で無表情、顔に凄みのある傷跡があり、いつも白いペルシャ猫をなでている。失敗した部下はすべてその場で処分されてしまう・・・。怖い悪役だと、子供心に思ったものです。

 

 

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今回のブロフェルド役は、あの俳優クリストフ・ヴァルツ。タランティーノ作品で毎回アカデミー賞を取っている存在感溢れる演技派です。

アカデミー賞授賞式のタキシード姿も、ヨーロッパ系の俳優だけあってエレガントでした。

 

過去の007作品のオマージュ的要素もふんだんで、ぜひ007好きな方には、ヴァルツ=ブロフェルドを見てほしいです。

 

 

 

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ボンドのスーツのキーワードは「ピチピチ」(笑)です。

 

ジャケットのウェストは極限まで絞り、肩から腕も筋肉の付き方まで判ります。トラウザーズはさらにピチピチで、ヒップラインからふくらはぎまでピッタリです。これで大アクションするわけですから、いったい何着のトム・フォード・スーツを用意したのでしょうか。

 

 

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これは良い服だと思ったシーンは、ローマ市での葬儀場でのひとコマです。女優モニカ・べルッチ演じる殺し屋の未亡人は、最年長のボンドガール(ウーマン)だそうです。

 

彼女に近づいていくボンドのスタイルは、シンプルなブラックスーツ、シャツは純白でピンホール。ブラックコートはダブルのアルスター・コートです。

 

 

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特にこのアルスターコートがいいです。大きなアルスターカラー。背中にはベルトが付いています。ボンドは他にシングルのチェスターコートも着ていますが、なんといってもこのアルスターコート姿の方が似合います。

 

 

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モニカ・べルッチは映画「マトリックス」シリーズの「パーセフォニー」役から12年、いい感じに老けていて相変わらず魅力的です。

 

 

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脇役ではボンドの上司「M」役のレイフ・ファインズが着用しているダブルブレストのストライプ・スーツがクラシックでした。Mの上司「C」が内務大臣の友人というエリート官僚です。

 

このCが着ているスーツはグレーのモード風ですが、ピチピチではありません。正統派の秘密情報部のボスらしいレイフファインズと対比した服装だと感じました。

 

 

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・・・・ということで、英国の伝統的な映画には、役柄に応じた様々な男性ファッションにそれぞれの意味合いが隠されています。そんな事も思いつつ映画を観るのも面白いですね。

 

 

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さて・・・・三洲堂テーラーでも、ボンド的なタイトでラペル巾がナローなスタイリッシュなスーツのオーダーが増えてきました。

 

 

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007シリーズを観た後の男性は、おそらくピッタリとしたカッコいいスーツが欲しくなると思います。

 

当店はそんなお客様の願望をかなえます(笑)!!

 

映画の後は、ぜひBESPOKE TAILORにお立ち寄り下さい。

 

お待ちしております!

【TV】ドラマ「下町ロケット」、財前部長のスーツ

2015年11月25日

TBSのテレビドラマ「下町ロケット」の視聴率が良いようです。技術立国日本と、それを支える様々な人達の人間模様は見ていて面白いですね。

 

 

 

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最近はこのドラマの登場人物の中でも、最も個性的なキャラクター、俳優吉川晃司さんが演ずる「財前部長」のスーツについて、お客様と話題になることが多くなってきました。吉川晃司さんは、一昨年の大河ドラマ「八重の桜」で、西郷隆盛役を演じていて、その自然な演技と雰囲気が魅力的でした。

 

 

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話題となる内容は、財前部長の顔色と髪の白っぽさに加え、もっぱら着用しているジャケットのウェストが絞りすぎではないか、そして肩幅が広すぎるのでは、の2点です。

 

財前部長のスーツはとても細身です。ラペルの細い感じとウェストの絞り感は、ディオール・オムやドルチェ&ガッパーナのスーツに似ています。また、襟のデザインも目を引きます。下襟のゴージラインがセミピークトラペルのように上がり、上衿との間がとても狭くなっています。

 

 

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このスーツは、「日本を代表するメーカーの開発部長」という責任感と、ストイックな姿勢をうまく表現していると思います。

 

肩幅の広さとウェストは、吉川晃司さんの体型そのものです。別にスーツのデザインが好んでこの姿勢をとっているわけではなく、若いころは水球の選手でならし、現在も自分に厳しくトレーニングを課していなければ、この体形は維持できません。

 

最近のインタヴューでは、ご本人のスーツはすべて「オーダーメイド」ということです。確かにこのスーツ、BESPOKEならではの雰囲気が感じられます。

 

 

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前半の最大の見どころ、帝国重工の役員会議のシーンは、緊迫する役員会議で、スーツが効果的に使われるシーンがありました。TV画面の切り取りで、画像が悪く申し訳ないのですが、写真は帝国重工の藤間社長(杉良太郎)に対し、財前部長がプレゼンをするシーンです。

 

 

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当初にべもなく財前部長の調達案を否定した藤間社長ですが、財前部長の説明が深くなるにつれ、まず背広を脱ぎ始めます。

ウェストコート(ベスト)姿の社長は質疑を繰り返しつつ、脱いだ上着を会議のテーブルの上にドンと置きます。

 

 

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この「上着を脱いで話を聞く」という姿を、居並ぶ役員の少し驚く表情とともに、カメラは収めています。「・・・・あの社長が財前部長の話を聞いてやってる・・・・」。

「胸襟を開く」という言葉がありますが、まさにこれでしょう。

 

 

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こうした企業ドラマは役柄に応じたスーツスタイルが必要とされます。作り手の方々の手の入れ具合はスーツの使われ方ですぐ判ります。

 

 

今でも思い出すのは、先日他界された、元富士ゼロックス会長の小林陽太郎氏のお姿です。私が若手社員だった頃、「社長を囲む会」がありました。当時の小林社長といえば、経営者一番のダンディといわれていました。

 

入社式以来のご対面でした。意外と小柄でしたが、浅黒く健康的で、やや明るい紺のスーツに、真っ白なシャツ、小紋柄のブルーのネクタイ、ポケットチーフを差していて、目線が自然と上に集まるよう工夫されてらっしゃる感じでした。

 

まさに、イメージどおりのスマートな、そしてとても温かい雰囲気のある方でした。

 

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普段から富士ゼロックスのITビジネスに、様々な不満を持っていた私達同期一同は、生意気にも当時の小林社長にいろんな意見や質問をぶつけました。

 

ビール片手にちょっとネクタイを緩めつつ、「うんうん」とうなずきながら、若手の社員達の話を聞き、「君たちがやっていることが、この会社のこれからの支えとなるんだよ」等、にこやかにお話しされ、私たちは何故かなんとなく納得をしてその日を終わった(笑)気がします。

 

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企業にお勤めの皆さんは、スーツ姿を様々なシーンで見かけることでしょう。役職、人柄によって着るものは違ってきます。注意深く観察していただき、ここぞという時は、三洲堂テーラーまでお声をおかけ下さい!

 

BESPOKE・・・。 対話をしながら皆様の為のスーツをお仕立てします!!