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【新作品】ジェームズ・ボンドばりのタイトなスーツ

2017年3月11日

朝晩は冷え込みますが、日一日と陽光がまぶしくなってきました。

 

今日はすばらしく晴れ渡りました。卒業式などの行事も多いようなので、最高のスーツ日和といった一日ですね。合服ではやや寒く、冬服ではコートが要らない、そんな早春の雰囲気が好きです。

 

 

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さて、お客様からのリクエストで多いものが、「映画007シリーズのジェームズ・ボンドばりの細めで、かつ動けるスーツが欲しい」というご希望です。

 

 

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今回オーダーを頂いたスーツはまさにそのリクエストでした。

 

30歳前半のお客様は、BWHのサイズが95、75、94というジェームズボンド・スーツを狙うには理想的なご体格でした。

 

 

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ジャケットの特長としては、アームホールを小さく、バスト周りもできるだけタイトに仕上げました。ウェストは当然絞りましたから、胸からウェストにかけてのドレープが美しく出せました。

 

 

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生地はイタリアのミル、リアベラ(Riabella)の250g/mのフォーシーズン物。

柄は細やかなハウンドトウース・チェックです。触っても少し凹凸感があるので、出来上がりがイタリア生地というよりも英国物に近い雰囲気です。

 

 

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ただし3メートルも離れますと、ハウンドトウースチェックがほとんど見えなくなり、ほぼ無地のダークスーツになります。そこがこの生地の魅力です。

 

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250g/mのノーマルな番手のウールですから、生地がしっかりと織り上り、職人が仕立てる際の立体感をだしやすくなります。無数のハ刺しが施されたラペルのロールも自然に盛り上がります。

 

 

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ボタンは光沢のある本水牛です。

上質な生地と天然物の水牛の角ボタンが馴染みます。

 

ライニングはメリハリを狙ってエンジ色です。

玉虫色の深いエンジが吸い込まれるようです。

 

 

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生地ブランドの「リアビラ(Riabella)」は、イタリア、ビエラ地区の大手ミル「トレーニョ」の別ブランドになります。イタリアのメジャーなメンズブランドに「リアベラ」名で生地を供給しているようです。

 

 

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タイトなパンツもお仕立てしまして、本日ご納品いたします。

動けてスタイリッシュなボンド・スーツになればいいですね!

 

 

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Riabella Italy 250g/m pure wool

 

スーツS上下・お仕立て上りプライス(税抜)

 

BESPOKE(仮縫い付きハンドメイド)・・・¥178,000

 

SARTORIA(パターンメイド)・・・¥64,000

 

 

 

 

 

 

【今日のスタイル】趣味が高じて作ってしまったネイヴィー・ブレザー

2017年2月14日

私は映画や読書が好きです。

映画なら歴史物やSF,読書は政治経済モノ以外は「海洋小説」と云われる分野が特に好みです。

「海洋小説」とは18~19世紀、七つの海を制覇したとされる英国海軍を舞台にした分野です。その頃の軍艦は風を受けて進む帆船です。

 

 

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ヨットのような単純な一枚の縦帆で進む船ではなく、3本マストにそれぞれ3枚の横帆が付いていて、木造の二層から三層もある巨大な艦が主役です。トップは艦隊の司令長官や艦長から下は少年水兵まで、艦を動かす乗組員数は約600人~850人位必要です。そうなると当然ながらそこには社会と組織が必然的に持つ人間関係や軋轢が生まれます。主人公の活躍とともに重厚な人間ドラマ、組織ドラマが繰り広げられることが、海洋小説の醍醐味になります。

 

 

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特に英国人作家C.S.フォレスター作の「ホーンブロワーシリーズ」はかの国では国民的なベストセラーです。作品はの1800年頃の海軍軍人の実態をリアルに描いています。エキサイティングな戦闘シーンのみならず、当時の国際情勢や産業革命まっただ中の社会の変化によって、失業しお金に苦労する生活も描かれています。特に服装や会食シーンは精緻に描かれています。

 

 

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そこに描かれている文字だけで、英国海軍の士官が着用する軍服が当時としてもいかに高価であるか、安く済まそうとすれば安っぽい素材と悪い仕立ての服しか手に入らないことなど判ります。

また、金モールや軍刀、マントなどを質に入れざるを得ないシーンなども当時の物の値段を体感できます。

 

 

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19世紀中葉には、英国海軍の行動と生活様式はアメリカ海軍に伝わり、東洋で産声をあげたばかりの近代国家「日本」にも波及しました。日本海軍には基本的に英国伝来の作法が伝わり、日本独自の作法を加え、現在の海上自衛隊も英国海軍の影響が多数見受けられます。

その一つがネイヴィーの軍服になります。

 

 

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ようやく服の話題までたどり着きました。今回私がオーダーしたジャケットは、写真のようなネイヴィーのブレザーです。シングルやダブルの4個×1個掛けブレザーは持っていましたが、ボタンが6個あり、「正六つ」という呼称の3個掛け釦を配したブレザーは初めてです。

 

 

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生地はウール&カシミアのしっかりとした打ち込みのネイヴィーです。

当店にストックしていたロロピアーナのウール&カシミア、ブレザー用生地で仕立てました。

 

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私の身長では6個釦になると、ブレザーの丈が短く釦の配置が一番問題でした。

ここは「仮縫い」で確認しながら調整したので、安心でした。

 

 

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また、アトリエの黒木がこのブレザーを仕立ててくれましたが、各工程でこまめに着用して補正しつつ進めましたので、洋服屋の店主でメリットのある経験が久しぶりに味わえました!

 

 

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ボタンはどうしてもメタルにしたかったのですが、キンキラしたものは流行っていません。そこでなるべく渋めにブロンズ色の艶なしを選びました。

 

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共生地でウェストコートまで仕立てられましたから、寒さ対策も万全です。

 

パンツは英国サヴィル・クリフォード(Savile Clifford)のフランネルです。純白のウィンターコットンも惹かれましたが、すぐに汚してしまうことを考えてライトグレーのフラノを合わせています。

 

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カフスは体格があまり良くないので3つだけメタルを付けました。

 

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・・・とうことで、永らく夢見ていた小説や映画に出てくるような服を作ってみて久しぶりに満足感を味わいました。

 

みなさまもぜひそんな「趣味が高じて作った服」を着てみませんか?

 

【エッセイ】映画「ワーテルロー(Waterloo)」と指揮官たちの服装

2016年10月9日

映画「ワーテルロー」は、1970年に製作されたソ連・イタリア合作の超大作戦争映画でした。

 

 

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CGの技術が全くない当時、戦場の模様、軍装、兵器、1815年頃のパーティーシーンなど、せべてが手作りで作られ、アナログで撮影されています。

今でも映画を完成させるには大変な労力が必要です。そう考えると、当時の大作と云われる映画、「ベン・ハー」や「アラビアのロレンス」などはいかような熱意と手間暇をかけて製作されていたのか、想像もつきません。

 

 

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この映画はその名前の通り、ナポレオンが敗北した最後の会戦「ワーテルローの戦い」の一日を史実に沿って描いています。開戦前のちょっとした幕劇はあるいものの、映画のほとんどは史上まれにみる激戦を、ロシア人の監督がソ連陸軍の最大限の協力を得て撮影しています。

 

 

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英国軍を率いるウェリントン公爵を俳優クリストファー・プラマーが演じています。この人もキャリアが長い俳優で、私も沢山の出演作を観てきました。しかし、この作品のクリストファー・プラマーは長いキャリアの中でも、最も光り輝いています。

 

 

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戦場に一人立つウェリントンは、目の覚めるようなブルーのシングルジャケットに白いパンツ、上襟はスタンドカラーとなっています。シャツの胸元には勲章を下げるリボンが美しいネクタイのように配されていました。

 

 

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凄絶な戦闘の最中、白馬に乗り指揮を取る彼の周囲は、英国伝統の赤い軍服(レッド・コート)の将校が固めていて、そのシーン自体が絵になります。

 

 

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写真左の俳優ジャック・ホーキンスは勇猛なピクトン将軍を演じています。ご覧のようにピクトン将軍はダブルのフロックコートに雨傘を持つ、典型的な英国紳士姿です。

事実、戦場に軍服が届くのが遅れ、このような平服で指揮を取ったようです。彼が指揮する陸軍師団が前進する際には、バグパイプ奏者が随行し聞きなれたあのメロディーを奏でます。

不釣り合いの様で何故か戦場に響き渡るバグパイプの音色に闘争心が掻き立てられるのでしょう。

 

 

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映画では、英国側の無謀なスコットランド騎兵の突撃の失敗と、これも効果が無かったフランス軍の近衛騎兵隊の英国方陣への攻撃なども描かれます。スコットランド騎兵は赤と金、フランス騎兵はブルーとグレーの軍服です。

 

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騎兵は花形だったのでしょう、両軍とも彩り豊かな軍服、サーベルを光らして突撃するその美しさは、実写ならではの映像です。

 

 

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忘れてはならない主役、皇帝ナポレオンを演ずるのは俳優ロッド・スタイガー。

伝説の英雄でありカリスマ指導者としての貫録を感じさせながら、中年になり少しづつ体力や判断力が鈍りつつ指揮をするナポレオンを見事に演じています。

 

 

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これぞナポレオン・カラーという彼の代名詞となったコートを着て、馬形帽を昔風に横にかぶり、小太りの身体に後ろ手を組んで戦争の指揮をする。英国軍がウェリントンと幕僚たちのチームで指揮をするのと違い、すべての命令がナポレオンという権力者から発する。・・・そして負けていく。孤独が伝わってきます。

 

 

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ロッド・スタイガーはナポレオンになりきって演じています。敗色濃厚な会戦の終盤、これまで皇帝に従ってきた歴戦のベテラン近衛連隊の最後の突撃と共に馬を進ませがらも、政治的な配慮で周囲から断られ、寂しく戦場を去るナポレオンを背中だけで表現していました。

 

 

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軍服やドレスの作製にどれほどの資金を投じたのか判りませんが、19世紀初頭の絵画でしか分からない当時の服装が甦る贅沢な映画だと思います。

 

 

 

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日本語字幕版も久々に復活したようです。よろしければ、一度ご覧になってはいかがでしょうか?

 

 

【新作品】TV「にじいろジーン」さんで職人、加治木が仕立てたジャケット

2016年3月4日

全国でも珍しい女性のスーツ仕立職人、加治木がTV番組「にじいろジーン」さんの番組中に仕立てたジャケットをご紹介します。

 

 

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本格的なBESPOKE TAILOR(=ビスポークテーラー)の洋服仕立ての工程は、ジャケット、パンツ、ウェストコートなどを、全ての工程を一人の職人が手とミシンで仕立てます。別名「丸縫い」ともいわれます。

 

 

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現在国内に全行程を手掛ける現役の仕立て職人が、約2000人ほどいると云われています。

 

三洲堂テーラーには加治木のようにジャケットまで仕立られる職人が4人、トラウザーズ(パンツ)とウェストコート(ベスト)専門仕立て職人が2人、カッター(裁断士)が1名、補正専門が1名の7名が在籍しています。

 

 

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加治木が番組中に実際に仕立てていたジャケットは、シンプルなシングルブレスト、2個ボタン、センターベントのデザインです。

 

ただし、ジャケット全体にハンドステッチを入れ、袖の切羽は3個釦の本開きにしてあります。

 

 

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取材ではジャケットの「フェイス」である、ラペル(下襟)に「ハ刺し」と呼ばれる作業をしていました。これは洋服の「表生地」と、服の土台になる「毛芯」とを付け合わせる作業です。

 

この作業の力加減と細やかな「ハ刺し」により、ラペルが身頃からきれいに立ち上がり、美しくロールする事になります。

 

 

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細やかな手仕事で衿の美しいロールが生まれました。アイロンワークだけでは無い、手仕事の縫製により生まれた立体感は、何年使っても消えません。そこが「毛芯」を使う意味でもあります。

 

 

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一つ一つのパーツ作りにも細やかな注意が必要ですが、ジャケットが完成する最後の袖付け作業はどんなベテランでも緊張します。アームホール(小)と袖側の穴(大)の大きさの違いは、「いせ込み」という作業をしつつクリアされ、立体的な袖付けがされます。

 

 

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一つ一つのボタンホールも全て手縫いになります。

ミシンでやれば簡単な事ですが、ボタンホールは手縫い仕事の基本です。従って当店には多機能ミシンが用意されていません。

 

 

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このジャケットに施されている「ハンドステッチ」は、本当の仕立て職人が一つ一つ手作業で入れていくハンドステッチです。生地に沈み込む工業用のステッチミシンとは違い、生地から浮き出てくるステッチこそ「手縫い仕事」。英国を起源として、世界中に延々と伝承されてきた歴史を感じさせる「装飾法」の一つです。

 

 

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このジャケットを仕立てた加治木には、宮原という弟子も付いています。

 

 

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加治木が教わった仕立ての技術をさらに宮原にも受け継ぎ、お客様にご満足いただける服を仕立てて続けることがBESPOKE TAILORの役割だと思います。

 

 

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実はこの生地はもともとスーツ用として仕入れました。

しかし、撮影の都合上でジャケットだけが仕上がりました。

 

しかも無駄にならないよう私のサイズで仕立てたのです。

 

・・・・さてズボンをどう合わせてジャケット+パンツとしてコーディネートするか。エンジのストライプが効いてるし、意外に難しいしなあ・・・などと思案中です。