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【映画】ウィンストン・チャーチル(DARKEST HOUR)

2018年6月9日

映画、邦題「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」

 

原題「DARKEST HOUR」

 

 

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鹿児島での公開が先日終わりました。

 

このアカデミー主演男優賞および、日本人の辻一弘氏がメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したこの作品は、ここ鹿児島の地では全国より遅れること一カ月強、5月7日からようやく公開されました。

 

当店向かいの映画館、天文館シネマパラダイスに感謝です。

鹿児島の他の大手シネコンがこの作品を上映しなかった中で、よく興業してくれました!

 

 

 

 DARKEST HOUR

 

 

 

原作のDARKEST HOURは、「暗黒の日々」とでも訳せばいいのかもしれません。

この映画はチャーチルの生涯全体を描いたものではなく、あらすじとしては、第二次世界大戦中の5月の一か月だけのストーリーです。

 

 

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ドイツのポーランド侵攻から約8か月、当初は「静かな戦争」と呼ばれた第二次世界大戦でしたが、ドイツ軍が突如北欧へ侵攻し英国軍が敗れると、責任を取ってチェンバレン首相が退陣します。

 

首相候補が消去法によって選ばれ、遂にチャーチルが首相に就任したその日、ドイツ軍の西部戦線への電撃戦によって、あっという間にオランダ、ベルギー、フランスが敗北していきました。

 

英国の内閣や有力議員の間では、ヒトラーとの一時的和平を望む声が多く、イタリアのムッソリーニを仲介役として講和条約を結ばざるをえない情勢になります。しかし講和は実質的な「降伏」であると主張するチャーチルはこの流れを覆し、大陸のダンケルクで包囲されている連合軍30万人を救わなくてはなりません。

緊迫する1940年5月がどうなるのか・・・という内容でした。

 

 

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歴史好きな私でも、英国内で戦争初期に「講和止むなし」という声が強かったとは知りませんでした。

犠牲の少ない講和を望む内閣や保守党の重鎮たち・・・。

その流れを主人公のチャーチルともう一人の重要な登場人物、ジョージ6世のバックアップにより、議会と世論をドイツへの徹底抗戦に持っていったその苦難の工程がリアリティ豊かに描かれています。

 

実際にチャーチルが述べた発言や膨大な演説と言動を、チャーチルに成り切り演じた俳優ゲイリー・オールドマンは、文句なしに主演男優賞の演技だと感じました。

 

さて、チャーチルが実際に愛用していて、作品中でもいつも着ているスーツが、チョークストライプのスリーピーススーツです。

 

 

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彼はサヴィル・ロウの老舗テーラー、ヘンリー・プール(Henry Pool)でこのスーツを仕立てていました。白いロングのタブカラーのような襟のシャツに、濃紺にドットの蝶ネクタイを締めて、葉巻をくわえている姿は、シルエットだけでもチャーチルだと判ります。

 

 

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約2.5センチ間隔はあると思われる幅広チョークストライプ柄のスリーピースは、太った身体をスリムに魅せています。

 

 

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映画「英国王のスピーチ」以来、吃音に悩む内気な英国王のイメージが先行しがちなジョージ6世。

この映画では見事なダブルブレストスーツを着て、当初はチャーチルと対立しながらもその人間性を認め、ともに困難なドイツとの闘いの道を考える重要な役割で登場します。

 

 

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英国王は代々海軍士官を兼務する事も多く、映画の中でも英国海軍のダブルブレストの制服を着用しているシーンもありました。

 

 

 

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ヒトラーに融和的な態度を取り続けた前首相、ネヴィル・チェンバレン役の俳優ロナルド・ピックアップも印象的でした。

チェンバレン保守党の重鎮で元首相ながらチャーチルの内閣に入ります。

彼はそこでもドイツと和平交渉すべきだという立場を崩していません。癌で体調がすぐれない中、モルヒネを服用しつつチャーチルに和平の道を説くチェンバレンの服装は、スリーピースにウィングカラーシャツに蝶ネクタイという、チャーチルよりもクラシック然とした雰囲気です。大陸で孤立した英国の若者たちの命を大切にしたい、という悲痛な気持ちも伝わります。これも従来の弱腰で日和見なチェンバレン首相のイメージを覆す好演でした。

 

 

 

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国王ジョージ6世から、国会だけではなく国民の声を直接聴いてみてはどうか、という指摘を受けたチャーチルが生まれて初めて地下鉄に乗るシーン。

そこに居合わせた乗客たちは男女を問わず当時の服装です。

しかし彼らの気持ちは現代人と変わらないものだと感じさせます。ドイツの脅威に対し敢然と立ち向かう勇気を最も持っていたのが、老若男女を問わず彼ら庶民だった、という印象的なシーンでした。

 

 

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最後に、日本人の辻一弘氏がメイクアップ&ヘアスタイリング部門でアカデミー賞を受賞しましたが、当然だと思います。ゲイリー・オールドマンをここまで変身させて、観る側に違和感なく感情移入させることのできるメイクアップを、日本人がやり遂げた事に誇りを感じます。

 

 

 

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余談ですが・・・

 

映画を観て最も感じたことがありました。

それは英国が日本、アメリカと同じく、民主主義国であるということです。国民の選挙により選ばれた議会により、組閣が行われ政府が政治を行っていく。

その過程では様々な意見が飛び交い、首相といえども 独断で政策を決めるわけにはいかない。自分の信念に従い政治を行うためには、議論と駆け引きが必要です。マスコミも口を挟みます。しかし、その煩雑さが民主主義なのだと再認識しました。

 

作品中で、ヒトラーは何でも自分の思うように決めて実行できる、うらやましい。とチャーチルがぼやくシーンがあります。チャーチルの伝記を見ると、ヒトラーやスターリンといった独裁者をとても嫌っていた事が判ります。また、戦争の敵国となった日本に対しては、かつて日英同盟を推していた事もあり、心底の憎しみを感じてはいなかったようです。むしろ同じ立憲君主制なので、親近感があっようです。

 

日本は中国や北朝鮮などの国と違い、選挙権もあるしブログで自由に発言できる。そんな民主主義国です。経済的に厳しい世の中ですが、GDPを少しでも押し上げていくために(笑、一市民としても出来ることもあります。そんなことを考えさせられた映画でした。

 

いつかDVDがリリースされたら、持っておきたい作品の一つになりました。